任官拒否って何?問題点や世間の誤解【防衛大学校】

今回は任官拒否(と付随した問題点)について説明していきます。

毎年卒業式の日に各種メディアに取り上げられる「任官拒否」というワード

ネガティブなイメージが多く、批判を受けることも多いのですが

しっかりと意味や学生の思いを知ってる人は少ないと思い

任官拒否そのものの意味や問題点

そして元防衛大学校生として思うことを今回は書いていきます。

任官拒否って何?

自衛隊候補生学校、防衛大学校や防衛医科大学校の卒業生が

自衛官として任官することを拒否することを一般に任官拒否といいます。

今回は私が在籍した防衛大学校の任官拒否について話していきます

防衛大学校の任官拒否者数は2016年度では卒業生の1割に当たる47人にのぼり

数々のメディアで任官拒否の是非がニュースになりました。

通常、防衛大学校の卒業生は幹部候補生学校に進むのですが

任官拒否者は4学年の冬に自衛隊への入隊をしない旨を教官や学校長に報告し

幹部候補生学校への進学、任官を辞退することになります。

任官拒否の問題点とは

挙げればキリがないので最も言われるものを挙げると

国民の税金が使われた「自衛隊のリーダーとなるべき学生」が流出すること

になるでしょう。

金銭面でみてみると

年間の給料だけをとってもボーナス込みで130万相当

これを四年間もらうことに加えて

数々の訓練に使われる備品、移動費用、人件費

日常生活における食費(一食300円程度)や光熱費

全てを統合すると四年間で1人の学生に使われる金額は非常に多額といえます。

ですので、国民の税金が注がれた防衛大学校生が

リーダーとしての素質の育成を受けたにも関わらず

大学卒業という権利を持ちながら幹部自衛官にならないことは

税金の持ち逃げと同義だ

と非難されることが多いのです。

問題点について

色々な解釈が飛び交っていますが、私は

防衛大学校で培ったことは一般社会でも役に立つことばかりであり、任官拒否をした学生たちは日本社会においてその能力を充分に発揮している

ということが言いたいです。

私は任官拒否という行為は良くはないと思いますが、必ずなければいけないシステムだと考えています。

というのも防衛大学校に入校した瞬間に一生自衛隊にいなければいけない

そんなルールは存在しませんし、してはいけないはずです。

私もそうですが入校前には幹部自衛官を熱望しながらも

入ってから自衛隊に向いていないと感じて退校する学生もいますし

選択の自由はあるべきだと思います。

私自身、自衛隊への熱意を失った学生が国を守る幹部にならない方がいいという考えで退校しました。

私も学位の授与に関しては疑問がありますが

現在では任官拒否、および任官後数年での幹部自衛官退官者は

一定の金額を返還しなければいけない制度がありますので

一般大学での四年間で必要な学費相当が支払われると考えれば

学位に関してはある程度の納得ができると思います。

それでも訓練や日常生活に使われた税金は多い

私もそう思いますが

彼らが将来の国家の経済(技術)を支える人材であることに変わりありませんし

人材育成のための支出と考えるべきだと思います。

税金の使い方の是非については色々と意見の別れるところですから

この点に関しては各人で思うところが違うはずなので

それぞれで良し悪しを判断すれば良いと思います。

 

ちなみに一般大学も税金を使った補助を受けているので

人材育成に使われる税金の話は防衛大学校に限った話では本来ないはずだと私は思っています。

 

以下の本の中で任官拒否についてもスポットが当てられています。

税金に関する防衛大学校批判に関してのことも詳しく書いてあるので、気になるかたは読んでみてください。

リーダーのいない経済大国―日本を救う国家的リーダーシップ (EYE OPENER SERIES)

元防衛大学校生として思うこと

私は元防衛大学校生ですが途中退校という身分です。

この身分に皆さんはどう思うでしょうか。

世間一般で言われている「任官拒否者は税金喰い」理論が通るのなら

私も任官拒否者と同じ身分だと言えます。

なぜなら、私は一年という短期ではありますし、大学卒業の権利を得たわけではないのですが

防衛大学校で学び、経験を培うために使われた費用が確かに存在するからです。

なのでそんな私が任官拒否について語ることにすらも是非があると思います。

自分の擁護のように聞こえるかもしれませんが今回書いている内容は

防衛大学校在籍時から変わらない自分の気持ちです。

この前置きを前提に読んでいただけたら幸いです。

 

今回、任官拒否という話題において皆さんに考えて欲しいのは

  • 幹部候補生学校に行かない卒業生の存在
  • 任官拒否者はどんな学生か
  • 防衛大学校での学びが本当に無駄になるのか

という3点です。

幹部候補生学校に行かない卒業生。

こちらは最近メディアでも言われるようになりましたが

防衛大学校を卒業し任官するはずの学生が幹部候補生学校に着校しないという問題です。

これは昨今の防衛大学校卒業式において

非任官者は任官者達と同じ卒業式に出席することができないことや

非任官に伴う様々な準備(指導官の説得など)を回避したいという目的で行われます。

もちろん中には本当に卒業後に自衛隊への熱意を失う方もいるでしょうが

幹部候補生学校は任官者への訓練物品や教育を用意して待っているのに対し

任官拒否をせずに行くふりをするというのは学校側への配慮があまりにも欠けていると言えます。

また、民間への転職をあらかじめ考えた上で

幹部候補生学校在学中や卒業後すぐに去る人も多くいます。

自衛隊は任官拒否者は部隊の頭数には考慮しませんが

彼ら(彼女ら)は部隊の頭数として考慮し、部隊の編成などを考えます。

ですから任官拒否とは違って組織そのものに迷惑をかけることになります。

最近では彼ら(彼女ら)にも任官拒否者と同様に学費の支払いが命じられるようになりましたが

学費以上に行動に問題があると私は思います。

任官拒否者はどんな学生か

自衛隊関係者ではない多くの人が

不真面目で愛国心のない学生が任官拒否をしていると考えますが

私の知っている任官拒否者はいずれも真面目で愛国心のある方でした。

ではなぜそんな学生が任官拒否をするかというと

自衛隊という組織に向いていないと考えたり、組織に疑問を持ったりするからなんです。

私が2学年の夏に任官拒否をした上級生とお会いして色々伺ったことがあります。

曰く、自衛隊という組織そのものへの不信感が大きかったらしく

不信感を抱えたまま自衛隊という組織に尽くすことはできないと考えたらしいです。

その人は本当に下級生からも尊敬され、指導は的確に、厳しさを見せながらも裏ではフォローを忘れない優れた学生でした。

ですから、世間一般で思われているほど任官拒否者は

不真面目であったり、愛国心のない方ばかりではないのです。

それぞれの学生がそれぞれの理由で退校をしています。

ですので先入観を持って任官拒否者を計ってはいけません。

任官拒否というのは生半可な覚悟ではできません。

同期、下級生に伝えることもはばかれますし

指導教官に通達するまでは本当に孤独に感じるそうです。

色々な関係性を捨てることにもなり、失うものも多いです。

世間一般が思っているほど任官拒否というのは簡単にできることではないんです。

ですから踏み切った学生の覚悟は任官者以上といっても過言ではありません。

防衛大学校卒業から幹部自衛官というレールは本当に強固な道ですが

そのレールから外れ、それぞれが欲するもののために挑戦する姿勢

その姿勢は通常の防衛大学校の学生にはないものですし

その覚悟を持った学生(同期)をバカにする防大生はほとんどいません。

もう一度言いますが

非任官者をバカにする防大生はほとんどいません。

仲間だからこそ、彼らの意志や覚悟が充分にわかっているからです。

防衛大学校での学びが無駄になるか

私自身の経験も含めた話をしていきたいと思います。

防衛大学校での四年間は間違いなくぬるま湯などではありません。

甘い蜜だけ吸おうなどと考えている輩は大半が着校後、入校前に逃げ出します。

1学年のうちは毎日上級生に囲まれながら必死で生活します。

2学年になったら1学年への指導方法に悩みながら板挟みの状況に苦しみます。

3学年になったら校友会、学生舎での仕事が急増し、忙しさに拍車がかかります。

4学年になったら卒業論文の作成、学生隊の運営に忙しい毎日を送ります。

訓練では上下級生関係なく部隊の方に鍛え上げられます。

訓練には本当に辛いものもあって中には病院に搬送される人もいます。

そんな濃密な四年間を過ごした人は任官、非任官関係なく屈強な人ばかりです。

他大学の学生以上に心身を鍛え、努力してきた人は一般社会でも貴重な働き手になります。

私自身、防衛大学校途中退校という身分ではありますが

退校後に勤めた仕事先では防衛大学校での経験を存分に発揮できました。

上下関係や仕事の要領の掴み方、伝達の仕方など、培ったものが一般社会で充分に発揮できています。

体力的にも、精神的にも新しい仕事に余裕を持って取り組めました。

これは防衛大に限ったことではなく

人間の経験は何かかしらの形で役立つことが必ずあると私は思います。

退校する直前、訓練部長(海将補)に呼ばれ、話した時に

「君が自衛隊に対して申し訳なさを抱える必要はない。君の経験は誰かに必要とされる。元防衛大学校生と胸を張って言える日が来る」

こんな言葉をかけてもらえました。

退校してからまだ年数は経っていませんが

防衛大学校にいた経験を会社やコミュニティーに活かしていけているという実感があります。

ですので、私が胸を張って言えることは

防衛大学校で学んだことは社会でも役立てられる。

という1点につきます。

ですから、任官を拒否した学生が企業やコミュニティーで活躍し

それが新たな日本の価値を作り出していると考えれば

任官拒否というのも悪い響には聞こえないはずです。

将来、一般人として彼らが自衛隊の広報や活動を支援していく

そんな共存方法もあると私は思いますし、私自身そうしたいと思います。

まとめ

今回は任官拒否についての簡単な説明とその他の問題点など

元学生なりに思うことを書きまとめてみました。

私の結論としては

  • 任官拒否は必要な選択肢の一つだとは思うが、税金の使い方に関しては様々な人が様々な考えを持っている以上一概に良いことだとは言えないし、悪いことだとも言えない。
  • 防衛大学校の退校や幹部候補生学校への着校拒否など他にスポットを当てるべき問題も多くある。
  • 私個人をとっても防衛大学校での学びが社会で発揮されることも多いので、人材育成としては任官、非任官問わず成功していると考えられる。

とまとめることができると思います。

今年も話題になるとは思いますが

どうか非任官者も様々な考えに基づいて行動している

という点を忘れないでもらえれば嬉しいです。

 

追記

辛わりにくい拙い文章で申し訳ありません。

しかし、私なりに任官拒否というものをしっかり考えた上で批判してほしいという思いで書かせていただきました。

任官拒否についてみなさんが考える一つの材料となれば幸いです。

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